08/05/12
熟成の時間
お芝居には再演ということがあって、
そのたびにマイナーチェンジをを重ねながら
作品が熟成していく過程があります。
テレビや映画のリメイクとは違って、
こういう作りこみ方は、演劇ならではの贅沢だと
つくづく思います。
昨年秋の三本立てでいえば、
『傾城反魂香』と『道成寺』は再演で、
『摂州合邦辻』は初演でした。
『傾城反魂香』は10年前に初演したものですが、
あらためて作り直してみると、
美術や演技プランに思ったほど
古びた感じがありませんでした。
手前味噌にいえば、10年前に、
ある程度の普遍性をもった表現が
できていたということかもしれませんし、
いじわるに考えれば、あまり進歩していない
ということなのかもしれません。
それでも個々の演技はかなり変わったと思いますし、
台本の読み方もかつてよりは
深くなった気がしたものです。
『摂州合邦辻』はまだ半年しかたっていませんが、
それでも再演ということになると、
作っていたときとは距離をおける分だけ、
見えてくることもあるように思います。
「あぁ、あの演技ってそういう意味があったのか」
「よく考えるとあの道具、変だよな」
ということが出てくるのです。
先日も初演の記録DVDを見た後で、
そうしたことが何点か出てきました。
作っているときとは、勢いが先行するもので、
それがまた初演の初々しい魅力に
つながっているのですが、
再演になると少し視点が落ち着くのです。
当初、半年ではあまり変わらないだろう
と思っていましたが、
本番中でも初日と楽日では作品の印象が
微妙に変わるものなので、
半年間とはいえ、視点の変化はあるものなのだと少々驚き、
創作の可能性にあらためて目をみはる思いでした。
演劇をなめてはいけません。
稽古とともに細かい検証作業が再開しています。
演技はもちろんですが、
美術や衣裳も相当変わると思います。
初演をご覧になったお客様も、
相模大野の、私たちにとっては初めての劇場で
是非それを確かめていただければと思います。
安田雅弘