09/07/09
シビウでの公演の翌日のこと。
朝、ホテルのロビーで、
突然おっさんが話しかけて来た。
僕の何倍も大きな身体、
顔はいっぱいにひげでおおわれている。
多分英語なんだろうが、早過ぎて、
何を言っているのかわからない。
ひどく興奮している。
怒られてる?と思いきや、どうやら昨日見た、
僕らの公演の感想をしゃべりたかったらしい。
おっちゃんは外人特有の身振り言語。
僕は日本人特有のあいそ笑い。
かすかに聞き取れた単語は「amazing」。
伝えたいというものすごい情熱だけは伝わる。
最後に握手を求められる。ものすごいごつい手。
僕は恥ずかしそうに「さんきゅーさんきゅー…。」連呼。
そんなことが2、3回あった。
2回目はルーマニアの美女が!
英語をもっと勉強しとけばなーと痛感。
いろんなことをお話できたのに。
どうやら、僕たちの芝居はルーマニアで
意外と受け入れられたのかもしれない。
でも実はそれは、ルーマニアという国が
演劇という世界に非常に理解のある
豊かな地であることの証なのだと。
日本とはまた違った演劇の環境がルーマニアには
確実にあるんだなと。
それに、遙か彼方、アジアの端っこからやってきた
僕らは、彼らにとってただ、奇妙なもの、
ものめずらしいもの、であっただけなのではないか。
「strange」なだけなのではないか。
かつての北野武がそうであったように。
ルーマニアでのカーテンコールは、いつも暖かく盛大な拍手に包まれた。
その瞬間を思い出すたび、「ルーマニア、ありがとう。」という感謝の気持ちと同時に
「今度こそ、もっとなんとかしてやる。」という思いで
いっぱいになる。
とにかく、
もっともっと発信しつづけなければ意味はないなと。
僕らの世界を。
岩淵吉能