12/10/02

女殺油地獄(ルーマニア)

10月2日UP 番外編日誌「初日無事終了」

おかげさまで、9月26日、27日とシビウ「女殺油地獄」
の公演が無事終了し、帰国した。

26日の「アバンプレミア」(初日前公演)は、
関係者中心の観客。本当の意味での初日。
客席は満員、立ち見も出る。
1時間半の公演中はしわぶき一つも
はばかられるほどの緊張感。
俳優はとてもよい集中をしていて、
いままでの通し稽古と比べても、
一番できのよい舞台になった。

翌27日が初日。
昼過ぎから記者会見が開かれ、
パンフレットも作られ、
初日の雰囲気が醸成される。
この日も満員だったものの、
前日公演成功ゆえの安心と疲れのためか、
俳優が集中力を欠き、
やや納得できない内容。
観客は前日同様、終演後すぐに
スタンディング・オベーションになり、
私のみならず演出助手の淳子さんや通訳の志賀さん、
ルーマニア人の演出助手ヴィチェンチウまで
舞台上に呼ばれ、「ブラボー」の声も起こり、
ホームの温かさを感じた。

まずは成功と言っていいだろう。
《四畳半》による演技は、
彼らにとって大変な稽古だったと思うが、
かなりのインパクトだった様子。
私は改めて山の手事情社の演技様式の可能性を
感じることができた。

今後はひと月に1回のペースで
レパートリーとして公演スケジュールが組まれる。
次回は10月19日、その次は11月25日という具合。
他の作品同様、月1回ペースが、
一般的なレパートリーのあり方とのこと。

帰国後すぐに「トロイラスとクレシダ」稽古再開。
「女殺油地獄」本番までの道のりは、
あらためて連載していきます。
しばし、しばしお待ちを。


※写説明

1枚目
リハーサルの様子。
左からフローリン(蝋九)、
ラルーカ(小菊)、ダナ(花車)

2枚目
美術の一部。
廃墟の教会が舞台なので、
本物の教会からの廃棄品を材料にしている。

3枚目
できあがったパンフレット。

12/09/24

女殺油地獄(ルーマニア)

9月24日UP 番外編日誌「本番初日まであと3日」

2ケ月遅れで報告してきた
ルーマニア・シビウの稽古場日誌。
初日が3日後、26日に迫りました。
現在劇場で稽古中。
役者たちは徐々に目の色が変わってきたものの、
まだ信じられないようなミスを連発。
スタッフは娘の誕生日だ、
首都ブカレストで受けたい試験がある、
家に食事をしに行く、
などの理由で〆切も守らず蒸発。
ほんとにどうなるんだ。
知るか。
いやいやそうもいかんだろう。
というわけで、
しばしお待ちを。
この日誌だけは書き上げます。


※写真説明
1枚目
稽古する俳優たち。
左ヴィオレル(山本森右衛門)と
アドリアン(豊島屋七左衛門)。

2枚目
劇場に貼り出された仮ポスター。
「日本の物語」と表示されている。
「女殺油地獄」じゃわかんないということ。

3枚目
娘の誕生日を理由に〆切を放棄した
美術担当のアリン。
楽しそうだが〆切は守らない。


12/09/18

女殺油地獄(ルーマニア)

9月17日UP 番外編日誌  突然の訪問者(7月13日)

「明日、キリアック氏が稽古を見学したいそうです」
稽古場でダリアから告げられたのが昨日のこと。
また急な。総監督キリアック氏が稽古総見するのは20
日と決められている。あと1週間ある。
「まだできてないけど…」
「できているところまででいいそうです」
「でも、通し稽古がいいんでしょ?」
「それは、まぁ」
まだ、毎日通し稽古というところまでこぎつけていな
い。しかし予定変更。
当然かもしれない。20日の総見が終わったら俳優はバ
カンス、私たちは一旦帰国。20日に見て、どうなって
るんだこれ、という場合取り返しがつかない。聞けば
ダビジャの「プラトーノフ」も見るという。劇場側と
してはそれだけ秋の新作に期待をかけ、慎重でもある
ということか。

俳優たちが明らかにそわそわしている。ヌキ稽古で少
しダメを出すとヴェロニカは泣き出す。総監督まだ来
てないよ。どれだけ神経質になってるんだ。今までさ
んざんやれと言ってきたのに、そぶりさえなかった自
主稽古が2階で始まっているという報告。なんじゃそ
りゃ、おそいおそいそんな付け焼刃、いまさらやった
って…。ただ彼らの慌てふためきぶりというか、素直
すぎる焦り方があまりにほほえましく、ボク自身逆に
落ち着く。
まぁ、やるだけのことはやってきてるし、できている
ところまで見せるしかない。
19:30開始ということで休憩に入ったが、休憩あけを待
たずに発声練習を始める一群。ばっかじゃなかろか。
スタッフと目を合わせて笑いをかみ殺す。そんな俳優
たちを尻目にオレは平常心だぜと与兵衛のチピリアン
は相変わらず横になっている。
定刻過ぎに昨日までのバカンスで真っ黒に日焼けした
キリアック氏がテニスシューズに短パンポロシャツと
いうひどくくつろいだ姿で登場。なぜか顔を見知った
他のスタッフも続々と入場。照明、音響、広報、マー
ケティング、ポスターのデザイナーまで。あれ、今日
そういう日なの?
スンジアナが「こんにちはキリアックさん」と挨拶す
るも無視され、関係者から笑いが漏れる。

「はい、じゃどうぞ」と言って通し稽古を始めた。
俳優たちは緊張のためかミスを多発。チピリアンがポ
カ、あえなく平常心のメッキがはがれる。それにして
もどうやって完成度を上げよう。キリアック氏の顔色
より、初日に客席を埋めるであろうシビウの観客を思
って冷や汗が出る。何を、どこから手をつければいい
のか…。
1時間25分ほどで終了。
「みんないるか」と休憩から戻った俳優たちを睨め回
し、キリアック氏よりダメ出し。私に、ではなく劇団
の俳優たちにダメを出す。確認するようにときどきこ
ちらを窺う。
以下羅列。…ディアナとラルーカはよかった。ダナは
声が嗄れてる。チピリアンには言いたいことが山ほど
ある。フローリンは前半よかったが後半息切れしてる。
アドリアンもいい所と悪い所がある。こんなに鍛えて
もらう機会はないぞ。技術を身につけろ。役者として
大きな武器になる。これは世界的な水準の指導だぞ。
身体を重く使え、軽く使うな。すべての登場人物の輪
郭をしっかりしろ。緊張とリラックスを同時に行わな
ければならないすごいシステムだ。1時間半だろ、エネ
ルギーを維持しろよ。ヴィオレルは何だ、お前の芝居
はコントか。時間はお前らの味方じゃない。すごいチ
ャレンジだぞ。奇跡が起こるか、クズか、どちらかだ。
ヤスダの言うことを聞いて奇跡を起こせ!
こちらにとても気を遣いつつ、俳優を激励している。
それにしても、「奇跡を起こせ」にはモーセもびっくりだ。

※写真説明
1枚目
「豊島屋七左衛門」役のアドリアンと
与兵衛の母「お沢」役のダナ。

2枚目
与兵衛の伯父「山本森右衛門」役のヴィオレルと
与兵衛の惚れている遊女「小菊」役のラルーカ。

3枚目
通し稽古風景。与兵衛と蝋九の喧嘩の前。

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