12/07/11

女殺油地獄(ルーマニア)

番外編日誌 「ガリバー旅行記」(5月31日-4)

横道にそれた。
日本とは演劇の置かれている状況が
あまりに違うので説明に手間取る。
面白かった芝居の紹介を続けよう。

26日に見た「ガリバー旅行記」。
これもプルカレーテの演出だ。
彼の名はヨーロッパでは鳴りひびいていて、
今年の夏、この作品で
エディンバラ演劇祭に招聘される。
国立ラドゥ・スタンカ劇場で、1時間半の作品。
床にはわらが敷き詰められ、女優たち演じる、
さまざまな馬が舞台のあちこちでいななき、
闊歩している。
それが客入れだ。期待させる。
開演とともに、舞台上には本物の馬が登場し、
客席がどよめく。
そんな具合に、
ほとんどセリフらしいセリフがないなか、
演劇的な仕掛けが次から次へと繰り出され、
われわれも題名だけはよく知っている
「ガリバー旅行記」が語られていく。

(つづく)

本稿の舞台写真はシビウ国際演劇祭から提供を受けたものです。
他の写真は山の手事情社が撮ったものを使っています。

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山の手事情社次回公演!
「トロイラスとクレシダ」原作/W・シェイクスピア
2012年10月24日(水)-28日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
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12/07/11

女殺油地獄(ルーマニア)

番外編日誌 カンヌ映画祭(5月31日-3)

俳優が地元の誇り、
ということに関連して大きなできごとがあった。
今年のカンヌ映画祭で、
シビウの国立ラドゥ・スタンカ劇場の女優が、
女優賞を受賞したのだ。
27日夜、劇場の客席についたところで、
後ろに座っていた知り合いが、
「ヤスダ、ビッグニュースがある」
と話しかけてきた。「なに」
「クリスティーナ・フルトゥールが
カンヌを受賞した」
「えー」びっくりだ。

邦題はどうなるのかわからないが
直訳すると「丘の向こう」とか
「丘を越えて」という作品。
これが脚本賞と女優賞を受賞した。
ルーマニアの修道院で実際に起こった事件らしい。
女優賞は主演の2人の女優が受賞しているが、
クリスティーナは2年前にラドゥ・スタンカ劇場で
《山の手メソッド》のワークショップに
参加してくれた役者さんだ。
それ以前2007年に
ボクが初めてシビウ国際演劇祭に訪れたとき、
彼女がニーナを演じた「かもめ」や、
主演した「馬鹿と暮らして」を見て、
魅力的な女優さんだな、と思っていた。
昨年のワークショップでは出会えず、忙しいのかな、
と思っていたら、今回の受賞だ。

テレビのニュースで、
流暢な英語でインタビューにこたえる彼女を見て、
随分遠くにいるな、という思いと、
いやいや思ったより近いのか、
という思いが交錯した。
おそらく彼女はシビウに戻ってくるだろう。
今度はシビウだけでなく
ルーマニアの誇りを体現して。
そしてまたここの舞台に姿を見せるだろう。

(つづく)

本稿の舞台写真はシビウ国際演劇祭から提供を受けたものです。
他の写真は山の手事情社が撮ったものを使っています。

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山の手事情社次回公演!
「トロイラスとクレシダ」原作/W・シェイクスピア
2012年10月24日(水)-28日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
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12/07/09

女殺油地獄(ルーマニア)

番外編日誌 「私のあらし」(5月31日-2)

プルカレーテの演出作品。
原作はシェイクスピアの「あらし」だが、
「THE TEMPEST」ではなく
「A TEMPEST」と題名がついている。
書き直してはいないが、セリフをカットし、
入れ替えている、と思う。
タイミングのズレた英語の字幕はついていたが、
ルーマニア語の上演で、詳しくはわからない。

ぼろぼろになった部屋の中に住むプロスペロー。
すべてはこの部屋の中で展開する。
あらしも部屋の外のできごとで、
ドアから強い風が吹き込んだり、
天井の一部が落ちたりして表現される。
すべてはプロスペローの頭の中で起こった幻影だ、
という風に描かれている。
夢だったのかもしれないと思わせる。
キャリバンとミランダを同じ男優が演じていて
興味深い。裸のキャリバンが
紙でできたドレスを着るとミランダになる。

何となく「ファウスト」にテイストが似ているなぁ、
と思っていたら、主役の俳優が同じだった。
シビウの俳優ではない。
クライオーヴァという都市の俳優だ。
こんな感覚が日本ではなかなかイメージしにくい。
たとえば彼は香川高松の俳優だ、とか、
新潟長岡の俳優だ、なんて言い方を
日本ではしないし、できない。
それぞれの都市に劇場があって
(それは日本にもあるが…)、
その劇場名を冠する公立の専属劇団が必ずあって、
そこに在籍するすぐれた俳優は地元の誇りなのだ。
日本でもプロサッカーはそれをめざしている。
そんな風にルーマニアでは
(ヨーロッパ全般そうだが)
演劇が機能している。

主演俳優のほかにも、
ぼろぼろの部屋、ほこりっぽさ、積みあがった本、
紙の多用、解釈上複数の役を1人の俳優が演じる。
似ているはずだ。
ただ、「ファウスト」と違って、
世界がこの部屋の中に凝縮し、
なるほど「あらし」はこんな風に
読むこともできるのか、と巨匠の腕前に舌を巻く。
途方もなくさびしく、切なく、美しい。

プルカレーテは日本では知られていないが、
(てか日本で知られている海外の演出家って?)
来年来日し、東京芸術劇場で公演が予定されている。
ヴェデキントの「ルル」。見るべきだろう。

(つづく)

本稿の舞台写真はシビウ国際演劇祭から提供を受けたものです。
他の写真は山の手事情社が撮ったものを使っています。

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山の手事情社次回公演!
「トロイラスとクレシダ」原作/W・シェイクスピア
2012年10月24日(水)-28日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
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