13/05/20
妙念(みょうねん)
海外公演の稽古にはいってから
長いことみかけてない人がおりました。
山の手事情社最古の俳優、山本芳郎さんです。
客演のため他劇団に浮気中でした。
さて山の手事情社では
客演から戻ってくるまで山本さんのでるシーンの稽古を待つのか。
いいえ待ちません。
私、石原が代役をつとめさせていただいておりました。
そんな石原妙念ですが劇団員しか見ることはありません。
妙念というのはもちろん役名です。
清姫という執念の塊みたいな女の化け物(蛇の化け物)に狂わされ
狂人になってしまったお坊さんです。
代役だからせっせと山本さんの台詞とか動きとかそんなようなものを覚えようと
過去の「道成寺」公演DVDを見て真似をしようとするのだけど
同じ形をしているつもりなのにどうも違います。
何度も試みるが違います。
どんどん自分が嫌になってくるので
山本妙念によくある手の形にとりあえず「アイーン」と名付けました。
かなりの確率で胸のあたりに腕を持ってくるからです。
名付けるとイメージがしやすくなります。
そういったどうでもよい余計なことをつい考えてしまいます。
さて「道成寺」は歌舞伎や能、その他いろんなジャンルで扱われ、ストーリーも様々あります。
山の手事情社の「道成寺」は三つの「道成寺」から成り立っています。
山本さんのやる妙念が中心の話はその三つの中でも特に緊張感の高いものです。
ちょっとした物音や息遣いにも過敏に反応するような神経の研ぎ澄まされた状態を求められます。
シビウでは廃墟となった教会で公演をするとのことなので
考えるだけでわくわくします。
それはさておき再演とはいえ台本読みからはいっていきます。
私にはありがたいです。
最初のシーンでは妙念が後から登場します。
それまでにまわりの先輩が静謐な空気を作ってくれるのでとても入りやすく
私はそれだけも、助けられてるなぁ、とおもいながら
その空気にのっかってやろうとしますがどうしても山本さんになれません。
私は瞳孔がひらきっぱなしで、
これはいいのか?どうなんだ?
とおもいながらどんどん山本さんになろうなろうとしていた自分がくずれていって
山本妙念を目指していたはずなのに石原妙念になってしまって
困った、と。
現在、妙念を山本さんにお返ししてからはまた
いままでとは違った味わい深い思いでみつめてしまいます。
石原石子