14/07/16

にごりえ

『永里子のこと』(俳優紹介)

永里子は感心な女である。

いつもバッチリメイクして稽古場に現れる。
朝仕事をしてきた日にメイクしているのはわかるけれど、そうでない日もだいたいバッチリメイクしている。
メイクしないでどこかに出かけていくなんてありえないらしい。

それだけ見られている意識があるんだろうから、結構なことだとは思うけれど、しかし周りからみれば、隙だらけの女である。
誰が見てもそうである。

もう少し姿勢をよくするだけで、念入りにメイクなんかするよりもはるかに美しく見えるのに…と俺なんかは思ってしまうのだが、余計なお世話なのだろう。

しかし油断ならないところもある。
頭悪そうに見えるが、海外ツアー中とかに飛行機やバスの中で読む本はドストエフスキーやトルストイといったロシア文学の長編である。

そんな知性的な部分が滲み出れば、メイクしなくてもキレイなんだが(たぶん)。

『にごりえ』でどんな顔を見せてくれるか。
小栗永里子をよろしく。

山本芳郎

14/07/15

にごりえ

『5000円札の顔となった樋口一葉の作品』

まず『にごりえ』 という作品の大まかな概要を調べてみると、この作品は5000円札の顔となった樋口一葉の代表作であり、風俗街に生きる男女のすれ違いを描いている話となります。よくよく考えてみるとこれは異常な事だと思えてくる。現代で言えばキャバクラやソープが並ぶ町並みの中の男女の恋愛の話を書いていることになりますが、そんな話を書いてお札の肖像画に選ばれている。元5000円札の顔である新渡戸稲造は国際連盟の事務次長にまで上り詰めた人だが、風俗嬢を主人公にした女性の話というある種社会の底辺を描いた樋口一葉がその座を奪い取ったのだ。
 
そんな一葉の代表作である『にごりえ』 。

この作品を山の手事情社の俳優を通して描く過程で生まれた《ショートストーリーズ》 の中には、日常とかけ離れた生き方をしている人物が何人も出てくる。それらのほとんどが他人から理解されがたい生き方をしていて、その結果人間関係が壊れる事もあり、逆に保たれている人間関係もある。或いは壊すべき人間関係もあるのかもしれないと思わされる瞬間もある。

『にごりえ』 にも《ショートストーリーズ》 にもどちらも現代に生きる僕らに通じる、人間とは分かり合えるようで分かり合えない存在であり、それを覚悟した上で自らの生き様を見つけていくという話が描かれているように思える。

僕はこの作品が完成するまでの過程を見つめ続け、僕自身の描くべき生き様を見つけられるようにこれからも作品に関わっていきたいと思います。

演出部 河合達也

14/07/14

にごりえ

『みはるのこと』(俳優紹介)

安部みはるは芯の強い女である。

ある日終電まで飲んだ帰りに、家が近所なので、タクシーを同乗した。
そして俺が先に降りるときに、彼女が家に着くまでの料金も払ってあげた。

すると次の日、
「タクシー代です」
と言ってお金を返してくる。
しかも俺が出してあげた差額分以上のお金を渡そうとするので、
「いいよいいよ」
と俺。
それでも彼女は引かず、割り勘にしようとする。
俺も
「もらいすぎだよ」
と押し問答。
タクシー代くらいおごるつもりだったので、
「いらないよ」
と言うと、

「私そんなの嫌いなんです!」

とビシッと言われた。

おごるって言ってんのに…、おごられると借りを作ってしまうとでも思ってるのかな。
芯が強いというか、可愛いげのない後輩なのだ。

人なつっこく笑ってると美人なんだけどなあ。

そんな安部みはるをよろしく。


山本芳郎

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