14/06/22
『佐々木啓という俳優』(俳優紹介)
俳優の種類を、舞台上だけでよく見える人と、舞台上以外でも素敵な人にわけるとしたら、彼は前者に属すると思われる。まあ、日常の奴の冴えないったらない。スタイルもよくないし、背も高くない、若いのに爽やかさというものがかけらもない。絶望的な服のセンスをしていて、紫の長袖シャツに眩しいほどの黄色のTシャツを重ね、頭に白いヘアバンドをして満足気にしている。はっきり言うと変な人である。しかも、そのことを自分で知っていて、開き直り、それを売りにしている感さえある。
しかし、不思議なことに舞台に上がると、あれ?少し魅力的に見えるではないか? なんだか素敵で、次に出てくるのが楽しみになる。(まあ、毎回ではないけれどね。) なんでだろう? 彼は人前で自分を表現することの比類なき喜びを知り始めているのだろうと思う。そして、その怖さも。だから、稽古の時の彼はとても真摯で、いつも瀬戸際に立っている。逆にそれがないと、いつもの変な佐々木をお金を出して舞台上で見なくちゃならなくなる。佐々木よ。おごるな。舞台に立つ喜びとそのための苦しみは正比例するのだよ。
さてさて、『にごりえ』 という舞台でどんな彼を見ることができますやら。私もとても楽しみであります。平素はお世辞にもハンサムとは言えませんが、舞台上でどう変わってくれますやら、みなさまもどうか見に来てやってくださいませ。
倉品淳子